◎“コーヒー豆”を際立たせる
まずは当店のプライスカードです。
ご覧のとおり豆の写真をメインにしています。
コーヒーショップによっては、豆を小ビンやガラスシャーレなどのケースに入れて展示しているお店を見かけます。実物を見ていただいてから、お買い上げいただくというのは理想的なスタイルだと思います。しかし、実物は劣化するため陳列してあるすべてについて定期的な交換が必要になります。
これは1回の焙煎量が少ない当店においては少々負担に感じます。
そこで、実物ではないけども、よりリアルさを感じる豆の写真を撮影し、それをメインにしてプライスカードを仕上げることにしました。
“リアリさのある写真”は、照明の当て方や色調整など設備的に追求すればキリのない作業になると思いますが、少なくとも
大きさ、表面の質感、色味
この3つの要素については納得のいく水準にしたいと思いました。
まず、大きさ。
これは印刷したものが実物大になるように調整しています。
顕微鏡で見るように拡大すればより細かいところまで見えるとは思いますが、1粒ずつ観察するというよりも粒のそろい具合や逆にばらつき具合などの“全体”を他の豆と比較して見ていただきたいと思い“実物大”にしました。
◎豆の写真撮影
次に、表面の質感と色味。
これは撮影機材が全てだと思います。カメラ本体、レンズ、照明。
使用しているのはマクロレンズで、解像度と色の階調再現が高いものを選択しています。照明は白色LEDを1基のみ使用しています。照明を複数使用すると別の日に撮影するときセッティングの再現に手間取るためです。色味については、その日に撮影を開始する前に、毎回手持ちの基準白色板でホワイトバランス調整をして撮影バッチごとの差がなくなるようにしています。
◎文字情報とプライスカードの作り込み
このように撮影した豆写真を使いプライスカードを制作していきます。
プライスカードに記載する文字情報。
前店舗では以下のような情報を表示していました(図3)。
・産地国、銘柄名
・農園、農協、精製所の産地詳細
・品種、標高、精製方法等の農作物としての情報
・焙煎度
・風味
これらは開業当初から一貫してコーヒーを楽しむための情報として、品種や標高等の情報を記載してきましたが、図3のように前店舗のプライスカードはレイアウトや使用フォントが雑多な印象で、お客様がどこを見て選んでよいかわからないケースが多く“商品を選ぶ”ためのプライスカードとしては役不足だったと思います。
そこで、今回の検討初期には、シンプルを追求して以下の3つの情報に絞ることも考えました。
・産地国、銘柄名
・焙煎度
・風味
これは、“美味しければ良い”というシンプルな考えに基づきます。この場合、コーヒーは脇役になると思います。
しかし、趣味としてコーヒーを楽しんでいる方も多くいらっしゃいますし、当店のスタッフもそうです。好奇心から色々と知ることによって増える楽しみもあると思います。
後者のお客様に対して、絞り込んだ情報は十分か考えましたが、やはり情報を削らないという方向で検討をしました。
情報の見せ方に余計な装飾をせず単なる文字のベタ打ちにすることで、視覚情報を徹底的に減らしました。使用フォントは、写真をより際立たせるために、主張の少ない明朝体のみを使用しました。
唯一削った情報は、前店舗版にあった「テイスティングメモ」です。
これは、他の豆と見比べるときには記憶に残りにくいため、風味については酸味と苦みのバランスを決める重要なポイント“焙煎度”と特徴的な“風味”を短い言葉で表すだけにしました。
◎陳列台の選択
プライスカードの陳列は、設置台を含めて“豆”がメインになるようにしたいと考えました。その台の存在感をどうするか、今回の検討でいちばん迷いました。
豆売りは店舗の要所なので、台の質感を高くする方向で考えていました。
具体的には、重厚感のある木製台というのがすぐに案として出ました。
しかし、
“豆の写真”
これを“徹底して”メインに仕立てるために、あえて陳列台は線が細くて華奢で存在感が弱いものを探しました。究極、プライスカードが宙に浮いているような状態を理想としました。
店舗内装や照明器具もあえて無機質な方向に振ったのは、商品である有機物“コーヒー豆”が際立つ、無機・有機のコントラストを出すためです。
またそれらのプライスカードを店内のどこに設置するか。
当店では焙煎豆は保管庫にあり販売する商品そのものを陳列していません。そのため、前店舗ではお客様が店内に入った瞬間にどこを見て商品を選んでよいか迷ってしまうケースが多々ありました。
そのようなことから、迷わず豆のラインナップのところに目を運ぶことができる、これを目標としました。
以上のことを総合して、選んだ陳列台はオフィス用のスタンディングデスクです。
目線の高さに近く、さらに、天板の下にはケーブルラックがあったのでこれをそのまま利用して間接照明も取り付けることで目線を引く工夫をしました。
動線的にも、店内に入った目の前にプライスカードがあるという理想的な配置ができました。
今後は、ドリッパーやペーパーフィルターなどの器具類をどのように展示するかが課題です。
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