◎市販の業務用ドリップスタンドを検討
今回は、焙煎後の試飲やテイクアウトドリンクで使用している「ドリップスタンド」をご紹介します。
大型チェーン店や喫茶店等のドリンクメイン店で使用しているような業務用ドリップスタンドは寸法指定して注文するイージーオーダーが定番です。サイズも大きく、オールステンレスで重さもあります。(参考)
ドリップスタンドをDIY制作する時間が潤沢にないことから、当初はイージーオーダー品を注文しようと考えてましたが、価格を抑えたかったことに加え、各種作業時にスペース確保のためドリップスタンドを頻繁に移動させるということが想定されましたので、重量と大きめのサイズ感で躊躇していました。
◎自前設計で進めることに…
そこで、やはり自作することにしましたが、時間もないことから部品加工は外注することにしました。1点試作ものはどうしても割高になってしまいますので、加工費用が安く済むように形状はなるべく単純、かつ部品点数は少なくということで検討をしました。
当初は「液だれ受けのトレーを付けたい」とか「高さ調整機構を付けたい」ということも考えてはいましたが、コストと日程的問題で単純な構造で作りました。
結果的には、板+丸棒という機械加工的観点から単純形状としてコストを抑える方向で、部品点数は2種4点。部品加工はミスミでネット注文しました。
組立ては六角穴付きネジ4本。下の写真のように仕上げました。当初はできるだけ低コストで作るために、木材+ウレタンニスという素材も考えましたが、衛生面を考慮して分解丸洗いできる構成にしました。
組み上がりの寸法は、各幅・高さともに使用する器具から逆算してます。幅の上限は設置予定の作業台でしっくりくる寸法(全幅300mm)、高さはドリップしたときにできるだけ周辺に跳ねない高さまで詰めています(全高150mm)。
◎各部品の概要
1)側板:ナイロン(PA;ポリアミド)
ナイロンの特徴は、耐熱性(耐熱200℃、連続使用~150℃)、耐摩擦、耐衝撃性が高いという点がありますが、樹脂製のため静電気でコーヒー粉が付着しやすくなります。
そこで導電グレード(カーボン入り)を選択しています。そのため色は必然的に黒になり、インテリア適性も高くなり好都合な選択となりました。追加工は丸棒をネジで引き込むための貫通穴(ザグリ2か所)です。
2)ドリッパー搭載バー:S45C+無電解ニッケルメッキ
バーの太さはΦ10mm(中実丸棒)にしました。これはドリッパーを搭載するには必要以上の太さですが、これは底面に強度を持たせるための構造部品がないので、この丸棒で強度・剛性を持たせているためです。また、抽出し終わったときにドリッパーをスライドさせるため滑りやすさを考慮して、無垢のステンレス材にはせずS45C(炭素鋼)+無電解ニッケルメッキとしました。副次的にコストも抑えられます。これで跳ねたコーヒー液が付着したときの拭き取り性も良好となりました。追加工は、バー両端に固定用のネジ穴2か所です。
◎全体の重量バランスの見直し
この2部品の寸法を仮決めした時点で、全体の重量バランスを見直しました。
当初、側板の厚さは10mmもあれば強度的に十分と判断しましたが、Φ10mm丸棒の重量(2本で320g)とお湯を注いだドリッパーの重量(約100g~)を考慮すると、側板10mm厚(2枚で350g)では重心が高くなってしまうのと、全体として軽量なため、作業中にずれやすかったり倒れやすかったりすると考え、低重心化のため側板厚さを2倍の20mm(2枚で700g)としました。
全重量も計670gから1,020gとなりました(計算値)。
各部品の固定方法は、側板側から六角穴付きネジ(M6)を使用しています。
固定方法については、位置決めピンなどを使ってかっちり作ってしまうと、接地面の平面度が悪いことによりカタカタ言ってしまう可能性があったため(実際に設置するステンレス台の平面度も300mm定規が密着しない程度でした)、むしろ置いた面に倣(なら)わせることができるように側板貫通穴のあそび(約0.5mm)内で調整できるようにしました。
実際に仕上がった結果は良好なモノとなりました。
・強度‥たわみ等の変形なく剛性十分
・低重心…仕上がり重量が実測1,035gということも相まって安定かつ移動させやすい
・バーの滑り性、清掃の容易性…良好
・組立調整によるガタつき抑制…良好
コスト面も当初注文を考えていたイージーオーダ品の約1/4程度で済ませることができました。ご興味ございましたらご連絡下さい。
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