2021年、本年も当店のコーヒーをご愛顧いただきまして誠にありがとうございました。
おかげさまでオープンから丸4年が過ぎ、当初は滝山とその隣接町からお客様がメインにご来店くださり、徐々に東久留米市内の各町から通ってくださるお客様が増え、今では市街からも当店を目的に来てくださり、この4年を振り返るとお客様と当店の業務にかかわる数多くの方々に支えられていることを実感しております。
そして、この1年で印象深かった商品は極浅煎り/シナモンローストのパナマ バルマウンテンです。
思い返せばオープン当初は「中深~深煎り/フルシティロースト」のみのラインナップでした。酸味がほぼなく、苦みもほどほどという多くに方に受け容れてもらいやすい焙煎度でのスタートでしたので、あれから4年で味覚的にも技術的にも守備範囲が広がったと思います。
酸味のあるコーヒーが 業界的な流行り とはいえ、やはり根強いのは “酸味の少ないコーヒー” であることは、店頭でお客様からお好みの味をお聞きすれば明らかであり、それは“一般的”であることを示しています。それゆえ、ラインナップに酸味のあるコーヒーを増やしていくことは当店にとって躊躇を伴うことでした。
しかし、これなら美味しいと思える少しだけ浅めの焙煎のコーヒー、つまり酸味が特徴のコーヒーを1種、もう少し浅めのものをもう1種と、お客様に徐々にご提案して、ご賞味・ご評価いただき、商品の見直しや焙煎の修正を繰り返しながら商品の幅を広げてきました。
このように、当店の小さな好奇心と小さな挑戦によって提案した商品を受け容れていただき、その都度必要だった技術やテクニックだったり、次の商品づくりへのアイデアを積み重ねてきた結果の “極浅煎りパナマ” として見ると、この4年間を象徴する印象深い商品になったと思います。それと同時に、この極浅煎りを無理なく自信を持ってご提案することができるタイミングだった、そのような1年だったのではないかと思います。
もう一つ印象的だったことは、当店の内側のことではありますが、焙煎をより確かなものにしたいという気持から、移転してから約1年積み重ねた焙煎記録をもとに、風味と再現性を進化させるための改造に着手したことです。
改造内容はのべ3段階の構想で、すでに完了しているものもあり、あと少しで完成の予定です(*1)。一つ一つの改造は、小さな進化でしたが、1年前を思い返してみると風味の進化を大きく遂げたことを実感しており自画自賛できる結果になったと思います。
*1)2022/1/13 時点で改造3段階目が完了いたしました。ある研究結果を利用した試作部品が完成し、取り付けをしました。焙煎工程中にしこりのように残っていた不安定要素に対して、“効果があるとうれしい”というトライアル的な実験でしたが、実際には飛躍的効果があり焙煎と風味の安定性が向上しました。
コーヒー焙煎は複雑かつ繊細で一筋縄に行かないケースがしばしばあります。それは焙煎機の操作1つが多数の要素に影響を及ぼすためと思われます。
焙煎中に生成される香りや味については化学反応論で論じられることもありますが、それは焙煎機の状態と豆一粒さらに豆内部の温度分布に至るまでの関係性、つまり全体と個の関係性について言及されることはほぼありません。それはやはり形・大きさ・成分等にある程度のバラツキがある “豆の集合体” を焙煎機に投入し、それらに対して複数の伝熱経路から加熱し、気体温度が室温から200℃超まで変化する熱流体を扱う工程であることを考えると、焙煎工程の体系的解釈には経験則に頼る部分が多く、あと付け的に科学的解釈を加えるということが無理がないように思っております。
そういうことから、焙煎工程の進化には時間や経験は必要なもので、今回の改造はこの4年間の時間と経験をまとめ上げた“一つの形”にできたのではないかと思います。
商品のこと、焙煎のこと、1年を一季節に見立てると、この “4年”という数字は春夏秋冬が一巡した、そのようにも感じます。
2021年は「美味しさの拡張」というテーマで取り組むことで、味づくりに関する引き出しが増えました。2022年は、どうしていこうかまだ思案中です。装置改造の完了によって見えてくる新しい領域があるかもしれません。
2022年も当店をご利用いただけましたら幸いです。
---
新年の営業予定は以下の通りとなります。
1月7日(金) 11:00~17:00
8日(土) 定休日
9日(日) 定休日
10日(月) 11:00~16:00 (短縮)
11日(火) 以降通常どおりです
Comments